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あなたがお呼びすればいつでも
「俺、負けませんから」
僕には彼の正体など分からない。
震える足と震える声が僕を呼び止めた。振り向けば、見知らぬ生徒が立っている。じっと見つめ返せば、彼がごくりと息を飲む。どうやら先日のストーカー男とは違うみたいだけれど、この時点で彼の言いたいことは分かっていた。よくあることなのだから。
「俺、愛染さんを諦めませんから」
予想していた通りの言葉が発せられて、僕は思わず微笑んだ。同じ微笑みのまま、彼と同等の声量で返す。
「君、知ってる?」
彼と同じではない、思いの丈を。
「あの子が僕の名前を呼ぶ時はいつでも、僕の心はあたたかくなるんだ。君が愛染さんを振り向かせるために、どうもがくかは分からない。けれど、覚えておいて。僕は本気だ」
何を勘違いしているか知らないけれど、あの子が僕を思っているだけだと思ったら大間違いだ。僕は王なんかじゃない。「民」のものじゃない。ただ、僕は、あの子が僕を思う以上に……。
愛染さんのことを好きなだけ。
ストーカーでもなんでも、誰にも渡さない。
「とれるもんならとってみろ」
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