かくれんぼ

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 高校に入学して間もない四月半ば、移動教室に向かう途中で、同級生の女子たちが色めき立った。富澤久乃(とみざわひさの)が彼女達の視線の先を追うと、二年生の先輩男子数人が渡り廊下を歩く姿があった。  隣にいた久乃と同じクラスの、しかしまだ名前も憶えていない女子が、大きく手を振りながら叫んだ。 「サクラせんぱーい!!」  集団の中の一人の男子生徒が、ちらりとその子を見た。それだけで、彼女とその周りにいた女子十数名は一斉にどよめいた。  この上なくミーハーだとは思うが、久乃はその時、一学年上の佐倉智紀(さくらともき)に一目惚れした。
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