安らぎをもたらす視線

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『スウッ、スウッ、スウッ…』 『シュッ、シュッ、シュッ』 『ペタッ、ペタッ、ペタッ』 『うん…。あっ、悪い。居眠りをしていたか?』 『いや、気にしなくて構わない北条。人間睡眠中の方が自然な表情を浮かべるから。私の描く絵画の画材として、居眠り中のボクシング部員の北条の表情と身体は、芸術家を志す私の創作意欲を大いに刺激したからな』 私の話に同級生の男子生徒でもある北条は苦笑を浮かべると。私と並んで石膏像を創作している優の方を見て。 『藤原の方も、モデルの俺が居眠りをしていても問題は無かったか?』 北条の問いに優は、石膏像を創作する手を止めて頷いて。 『ええ、問題はありませんね北条君。就寝中の人物を眺めながら、芸術の創作活動を行う経験は以前にもありましたしね』 優の説明に、北条が怪訝そうな表情を浮かべていたので。 『私が優の家に泊まりに行く時は、お互いに睡眠中の私と優の姿を画材として、芸術の創作活動を行う事もあるからな北条』 私の説明に、北条は納得した表情を浮かべながら頷いて。 『藤原と九条の二人は幼馴染みだからな』 北条の話に優も頷いて。 『絵美は私の大切な幼馴染みですからね』 優の返答に私も頷いて。 『御袋殿との関係で私が疲れた時は、優はいつでも受け入れてくれて、一晩中私の事を見守ってくれるからな。本当に感謝をしている優』 私の感謝の言葉に、優は幼い頃から変わらない優しい笑みを浮かべて頷くと。 『繰返しになりますけれどね。絵美は私の大切な幼馴染みですからね』 「もう正式に付き合えよ…」 『何か言ったか北条?』 北条が小声で何かを呟いた気がしたので、私が視線を優から北条に移して尋ねると。北条は苦笑を浮かべながら首を横に振って。 『いえ、俺が口を出す内容じゃないからな』 どうやら北条の小声での話の内容が聞こえていたらしい優は、北条に対して微笑みながら頷いて。 『私は今の関係に満足していますからね。北条君』 どうやら優が北条に対して話した言葉には、一種の釘を刺す意味があったらしく。北条は真剣な表情で優に対して頷いて。 『ああ、判っている藤原』 優と北条の男子の間で、私には判らない共通の認識を有しているようだ。 『作品を仕上げてしまいたいのだが。構わないか?』 私の言葉に優と北条の二人は、揃って笑顔で頷いてくれた。
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