シークレット・ラブ

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 その日から、私は心ここにあらずの状態な毎日を送っていた。  友達からは「隣の席が榊くんなんだから、そんな湿気た顔しないの」と窘められるか、「とうとう、榊くんに惚れちゃったか」と恋煩いを指摘されるかのどちらかだった。  恋煩いか……と私もあながち間違いではないなと考える。確かに、前々から気になっていたのは確かだった。付き合うことになれば嬉しいし、天にも昇る気持ちになるのは確実。  だからこそ、榊くんが私の事を好きなのだとしたら、是非ともお付き合いしたかった。  そんなモヤモヤした気持ちを抱えた私が、燎からの報告を聞いたのはそれから数日後の学校の下校途中の事だ。 「聞いたけど、教えてくれなかった」  燎が拗ねたような口調で、私の隣を歩く。 「いるか、いないかも分からないの?」  私の心臓はどちらとも付かない感情で、激しく脈打っていた。 「好きな奴とかいるのかって聞いたら、黙っちゃってさ。詰め寄ったら、いるけど教えないってさ。親友だと思ってたのに、隠すなんて酷いよな」  燎の力を持ってしても、聞くことが出来ないなんてどんだけ初心(うぶ)なのだろう。でも、好きな人がいることは分かっただけでも収穫だった。 「ところでさ、焼き肉の件はどうなるわけ? ちゃんと聞いたんだから奢ってくれんだろ?」  燎が私の腕を揺さぶり、すり寄ってくる。甘えたような口調を私はさらりと受け流す。 「聞いたも何も、私はちゃんと聞けたらって言ったでしょ。好きな人が誰なのか分からなかったら意味ないじゃない」 「そんなのずりぃーじゃん!」 「だったら、ちゃんと誰なのか聞いてきなさいよ」  そう言って、私は燎に人差し指を向けると自宅の方へと足を向けた。
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