シークレット・ラブ

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 二月に入ったのにも関わらず、向こうもなかなか手強いようで一向に朗報は訪れない。  もどかしい気持ちを抱えていた私は、校庭に植えられた木を見上げていた。  小さくて黄色いふわふわの花が可愛くてボンヤリと眺めていると、校長先生に声をかけられてしまう。 「この花、気になるのかい?」  全校集会の時ぐらいしか見かけないなのに、出くわした偶然に私は驚いた。 「……ま、まぁ」  全校集会での長話を思い出し、私は思わず身構えてしまう。数々の生徒の睡魔を誘い出し、うたた寝によって首を傷めさせた張本人がここにいるのだ。  一見すると、優しそうな雰囲気のおじさんといった感じだが、話がやたらと長いので生徒の間では不評だった。 「この木はミモザといってね、この時期ぐらいから黄色い花を付けるんだよ」  これは長くなりそうだなと、私は内心溜息を吐き出す。  どうやって逃げ出そうかなと考えていると「昔、インディアンの男女の間で愛の告白として使われていたんだよ」という言葉に思わず興味を引かれ、私は瞬時に目が輝いてしまう。  校長も興味をもたれたことが嬉しかったのか、意気揚々として詳しく聞かせてくれた。 「この木だけじゃなくて、正確にはアカシア全般なんだけどね。女性に渡した際に黙ったまま受け取ってもらえると、交際しても良いって事になるんだよ。だから花言葉に『秘密の恋』って意味もあるんだけどね。まぁー君たち世代じゃあ、メールとかで簡単に好きとか言い合えるんだろうけど」  何が可笑しいのか、校長先生が笑い出す。それと同時に、校庭にチャイムが鳴り響き校長先生が「まぁー頑張りたまえ」と言って去っていった。  その手があったかと、私は興奮で今にも走り出しそうだった。  いつまで経っても、燎からまともな解答が得られそうもなかったし、この方法なら自分から確かめても自分が好きだということはバレないはず……
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