第3章ー3

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そう言う彼女に、「僕も」と答えた。 二人とも頭上を歩くトラの存在に驚き過ぎていたことに気づいて、その場を去ってから顔を見合わせて笑った。 トラの部屋の側のガラス戸の奥では、ライオンが寝ていた。 「寝てるね」 「寝てると、猫そっくりですよね。トラ柄の猫、みたいです」 トラ柄の猫って、それ、トラなんじゃ……と思ったけど、言うのはやめた。 「……可愛い」 「じゃあさ、トラと一緒に写真撮る?」 「え、ええ!?」 「ほら早く並んで!」 戸惑う彼女の背を押し、トラが起きないようにそっとガラス窓に近づき、写真を撮ることにした。 ガラス一枚挟んですぐそばにトラがいる。 それだけのことなのに、彼女は必要以上に緊張しているようで、その緊張が僕にも伝わってきた。
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