第3章ー3

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パシャッと写真を撮ったあと、彼女が素早く逃げたので、思わず笑ってしまう。 さっきまで可愛いと言っていたのに。そばに行くのは怖かったようだ。 離れた場所からチラリと背後を振り返る彼女。まだ寝ているライオンを名残惜しそうに見ている。 「可愛い」と言った言葉は、嘘ではないらしい。 そっとそばにより、「ガオォ」と地を這うような低い声で驚かすと、「ヒッ」と肩を上げ、「やめてください!」と思いきり肩を叩かれた。 彼女、小柄なのに、結構力が強い……。 それから僕たちは、他愛もない話をしながら、しばらく園内を歩いた。 動物園の奥には、ゾウがいた。ゾウは飼育員の人が持つ長いホースで水をかけられたり、餌をもらったりしていた。 池にハマって遊ぶゾウの姿も見える。伸び伸びと遊ぶ姿を見ていると、こちらまで楽しくなってくる。 その時、ゾウがこちらを見た気がした。 大きな体につぶらな瞳、身体のパーツとしては対照的なのに、しっくりくる。
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