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「行こう」
僕は、彼女の手を取り、早足で歩き出した。
桜の花が舞うインクラインでは、人々がお花見を楽しんでいる所だ。
そんな中、僕はなりふり構わず、逃げるようにその場を離れた。
必死だった。
早くこの場所から離れなければ、と思っていた。
彼女の手を取り、歩く途中、周りの雑音は聞こえなかった。いや、聞こえないふりをしていた。
僕の異変を感じ取っているのか、隣を歩く彼女は何も言わなかった。
――知られたくなかった。
――彼女の前では、普通の僕でいたかった。
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