第四章ー2

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* あの夜があってから、僕たちは、急速に仲よくなった。 仲良くなると、彼女の内面を深く知ることができた。 やはり彼女は、細やかな気遣いができる人だった。 優しいけれど、ところどころ抜けていて、頼りない部分も多くあった。 失敗するとへへと口元をゆるませて笑う顔が、子犬のようにも子狸のようにも見えて、一度だけ、『狸に似てるって言われたことある?』と訊いたら、本気で怒られた。 狸は禁句だったようだ。 『女の子をたとえる時は、もう少し愛らしい動物でたとえてよね』 と、ソッポを向く彼女。 狸が動物の中で一番可愛いと思っている僕には納得のできない話だったが、僕たちの距離はそんな他愛もないケンカができるくらい近くなっていた。
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