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良樹も、そして芹沢もみな、同じ学部の仲間だ。
「初等教育って、小学校の先生になるの?」
「そのつもり」
月夜に咲く夜桜の下で、そんな短いやり取りをしながら歩いた。
「似合うね、すごく」
自分の夢や希望を語るのは、少し恥ずかしかった。けれど、彼女は僕の気恥ずかしさもすべて受け止めてくれた。
僕を見つめるその穏やかな表情を見ると、なぜか不思議な気持ちになる。
誰にも話さなかったことまで、話してしまいたくなる。
「正直……できるかなと、時々悩むよ」
「え?」
「僕に……先生なんて……」
将来の夢を。そう考えた時、出きてきたのは、小学生のころの僕だった。
抱える悩みを誰にも言えず、一人きり膝を抱えてうずくまっている。解決方法も進み方もわからない。
けれど、少し大人になった僕は、あのころの“僕”を助けたくなった。
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