第5章ー2

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小学生の、あのころの僕、僕のように同じつらさを抱える子どものそばに駆け寄り肩を抱ける人――。 そう考えたとき、僕は「先生」になりたいと思った。 僕は、どうにもならない悲しみを抱え泣く、僕のような子どもをこれ以上、増やしたくなかった。 「子どものころの僕のような、苦しみを抱いた子どもの味方になれる、大人になりたかった」 「それで小学校の先生に?」 「うん。短絡的だろ。それを夢だと思って、今、そのために勉強をしている。でも……僕なんかができるのかな……」 弱くて、みっともない自分の姿が浮き彫りになっていく。 春が怖い、人が怖い、まだまだ足りないものだらけの未完成な僕が、純白な子どもたちに何を教えられるのだろう。僕なんかが、彼らの「先生」になっていいのだろうか。 「僕なんか、だなんて言わないで。隆哉君だから……なれるんだと思うよ」
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