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絶えず聞こえるのは川のせせらぎ。鴨川からは、水のにおいがする。橋の上から人々の話し声が聞こえる。話し言葉も、景色も、においもすべて、僕の知らないものばかりだ。
この世界は、本当に僕がいた世界とつながっているのだろうか?
もしかしてこれは幻?
途端にわからなくなる。
理解ができないと、人の脳は動かなくなるのか。
目の前にいる愛しい人がずっと遠くにいるみたいだ。夢の中にいる人のような。僕は長く長い夢の中にでもいるのだろうか。
かすれる彼女、遠ざかる意識。現実を受け止めきれない僕の上に、暗い空からしとしとと雨が落ちてきた。心臓がきゅうと縮まるほどの冷気に包まれていた。
「びっくりしたな。突然降ってくるんやもん」
「近くにアーケードがあってよかったな」
屋根付きの歩道では、人々が急な雨から逃げるために雨宿りをしていた。
隣にいる大切な人をタオルで拭いたり、肩や髪につく雨粒を払ったりしながら、過ごしている。
皆、突然の雨に困惑しながらも、急なハプニングを楽しんでいるようにも見えた。
僕は人々の様子を横目で見ながら、青になったばかりの歩道を歩きだした。
「そこ、濡れますよ!」
背後から声をかけてくれた女性に耳を貸すこともなく、僕は屋根のない道を歩き続けた。
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