7人が本棚に入れています
本棚に追加
気持ちが半分しかこもってない……か。
まさにその通りだった。
今日は、朝からデートの予定だった。
映画館に入ると、横目に一喜一憂する彼女の姿が見えた。
青くなったり赤くなったり、時に涙したりする姿は、かわいかったし、そんな彼女をずっと見ていたいとも思ったけれど、僕は昨夜の情景を思い出していた。
それははっきりとした映像となり、スクリーンに映し出されていた。
僕が見ていた映画は、昨夜の桜の下で消えてしまった雪さんの姿だった。
目の前で彼女が消えた。
あの時、僕は、自分が消したのだと思った。
もちろん、彼女のことを、今まで一度も嫌だと思ったことなどなかった。昨晩もだ。だから、消してしまった理由はわからない。けれど、突然変異は何にでも起こる。
桜の下で何かを消すことをできるのは、僕しかいないのだ。
僕が、彼女を消したんだ――。
絶望の果て、僕は持っていた写真をポケットにしまってから、鉛のように重い体を何とか動かして、彼女が消えた場所へ行った。
最初のコメントを投稿しよう!