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やはりその場に雪さんはいなくて。大声で呼んでも彼女は現れず、近くを探し回ったが、彼女の姿は見つけられなかった。それから、僕はあたりの桜の木の周りを探し回った。
どれくらいの桜の木を巡ったのかはわからない。けれど、結局、彼女を見つけることができずに、気づけば日は上っていて。僕は一縷の希望をかけて、今日、この待ち合わせ場所へきた。
そこへ、雪さんはやってきた。
何事もなかったのかのように、いつも通りの笑顔で手をふり、僕に向かい駆け寄ってくる。
僕が消してしまったはずの、彼女が――。
「次は、面白い映画にするね」
少し残念そうに前を歩く彼女が、かすんで見えた。
僕はまた彼女が消えてしまう気がして、細い手首をつかんだ。
「隆哉君?」
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