第6章

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「隆哉君、ほんとに大丈夫? やっぱり昨日、全然寝れなかったんじゃない?」 返事を忘れた僕に、彼女がもう一度問いかけた。 「うん……寝てない」 僕は正直に答える。 「どうして?」 「君を、捜してたんだ」 全部、話すしかない、と思った。 「……どういうこと?」 「これ……」 僕は一握りの勇気とともに、持ってきた赤い手帳を彼女の前に差し出した。 「あれ? 私、手帳忘れてたんだ。どこへやったんだろうって思ってたの、あ」 彼女は途中で何かに気づいたようだった。 とっさに赤い手帳を受け取ると隠すように持ち替えて、狸の可愛い顔でへへへと笑う。 その笑顔にずっと騙されていたかった。僕は昔話の主人公が狸に騙され、結末を知る前の気分がよくわかった。
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