第6章

8/31
前へ
/31ページ
次へ
「この中に、昨日一緒に見た写真が挟まっていて」 「……うん」 「雪さんが帰ってから、もう一度見ていたんだ。すると、その中に見たことのない写真が三枚挟まっていた」 「……見た?」 と彼女は言った。 「うん。見た……。それで、どうして雪さんがこんな写真を持っているのか訊きたくて、あの後、すぐに追いかけた。すると雪さんが……桜の下で消えたんだ」 消えゆく彼女の姿を忘れることなんてできない。その姿は、僕の頭の中で何度も自動再生されていた。 「……どうして?」 と僕は言った。 「僕が消したんじゃないの?」 僕は、桜の下で、何かを消すことができる。けれど、戻すことはできない。 それなのに、雪さんはどこからか現れた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加