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何事もなかったかのように、いつもの笑顔で。
昨日、消えたはずの彼女が。
太陽が雲間に入り、彼女の顔が曇った。青い空がスリガラスで覆われて、灰色の空へと変わっていった。川の流れが速くなる。
「あなたが……消したんじゃないの……」
吐露する声はとても小さかった。何とか喉から絞り出した声のように思えた。
「どういう、こと?」
なぜか彼女の言葉を聞くのが怖いと思ってしまった。けれど、聞かなければ先へは進めない。僕は全身に力を込めた。
「桜の力を借りて、物を消せる力は……」
「……うん」
「その力は、隆哉君のものじゃなくて……」
「……」
「私のものなの……」
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