第6章

9/31
前へ
/31ページ
次へ
何事もなかったかのように、いつもの笑顔で。 昨日、消えたはずの彼女が。 太陽が雲間に入り、彼女の顔が曇った。青い空がスリガラスで覆われて、灰色の空へと変わっていった。川の流れが速くなる。 「あなたが……消したんじゃないの……」 吐露する声はとても小さかった。何とか喉から絞り出した声のように思えた。 「どういう、こと?」 なぜか彼女の言葉を聞くのが怖いと思ってしまった。けれど、聞かなければ先へは進めない。僕は全身に力を込めた。 「桜の力を借りて、物を消せる力は……」 「……うん」 「その力は、隆哉君のものじゃなくて……」 「……」 「私のものなの……」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加