第6章ー2

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そして、僕はずっと引っかかっていたことを訊いた。 「僕は“隆哉君”なのに、未来の僕は“隆哉さん”なんだ」 「そんなところに引っかかるんだ」と彼女は笑う。 「隆哉さんは同じ年だけど、私よりずっと大人だから。私は隆哉さんにたくさん救われて、守られて、今とっても幸せなの」 彼女の瞳が見つめているのは、今の僕でありながら、僕ではない。 たしかに彼女は未来の僕に恋をしている。 「今の僕とは、違う?」 しつこいようだけど、訊いてみた。やっぱり悔しいのだ。 「5年の月日は、大きいなと思うよ」 「どういう意味だよ」 負けた気がした。いや、実際負けてるのだ、未来の自分に。 冷静に考えればそれは嬉しいことなのだろう。でも、やはり悔しい。 くすぐり合う。彼女がきゃあと声を出し、笑う。 可愛くて仕方がない。くすぐり合ってはみ出た彼女の滑らかな足を布団の中に入れて、顔を寄せ合って笑った。
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