エピローグ

10/11
前へ
/11ページ
次へ
あぁ…… そうだったのか…… あの事件の日、彼女が消えたのは、すべての力を使い切り、この世から消えたわけじゃなかったのか。 彼女の体力がゼロになる前に、桜の季節が終わったのだ。 彼女は、体力がなくなりこの世から消える前に、自分の世界へと戻された。 きっと、桜たちが守ってくれたのだろう。 ともに不思議な世界の中で生きていた大好きな彼女を、桜たちが守ったのだと思った。 「どうかされました?」 まだ何も知らない彼女に僕は言った。 「いえ……ただ、嬉しかっただけです」 君が生きていてくれたことだけが、この世に存在してくれていることだけが、こんなにも嬉しい。 不思議そうに首をかしげる彼女の目は、まだ少女のようにあどけない。 まだ恋も知らない。無垢な女性がそこにいた。 「初めまして。僕の名前は市井隆哉と言います。今日からこの町でお世話になることになりました。……よろしくお願いします」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加