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ルリは和樹の隣に座った。和樹の顔を覗き込む明るい茶色の瞳は、ランプの光を吸い込んで暖かく輝いている。
やわらかい両手が和樹の肩に乗せられた。ふわり、と香水のいい匂いがした。
「大丈夫。サメを殺したくらいでこんなに動揺してるんだもの。あなたが力を悪用できるはずがないわよ」
「姫を助けに行ったナイト、旅先で浮気!」
くだらないことを言って来たコンガを思い切りにらみ付ける。
「ありがとう。変な奴だと思われても仕方ないって覚悟したんだが」
「信じるわよ。あちこち取材に行ってると、たくさん変な物を見るもの」
そっとルリが自分の鼻をなでた。
「鎮乃目の娘も、おかしな力を持ってたわ」
「ミコトに、ミコトに会ったのか!」
「ちょっと。いきなりこっちに来ないでよ。船が傾くじゃないの! ええ、ミコトちゃんは私の傷をきれいに治してくれたわ」
和樹の必死さにルリがびっくりしているのは分かったが、大人しくするなんてとてもできなかった。
「ミコト、ミコトはどんな様子だった?」
治癒の能力が神から得た物なら、ミコトも何か代償を払っているはずだ。和樹がウソをつけないように。
「車椅子で、何か眠っているみたいだったわ。顔はベールで隠れてて、見えなかったけどね」
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