2人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
頭痛を気にしながらそっと体を起こす。ありがたいことに、縄もさるぐつわもキレイになくなっていた。
和樹がいたのはゴムボートの中だった。それもプールで使うようなチャチな物じゃない。ランプとテントまでついている頑丈な奴だ。中には撮影機材が詰まっているのだろう、銀色の大きなケースが乗っていた。
「すごいでしょう。救難用のボートにエンジンつけて改造したのよ」
得意そうにルリが船のヘリをポンポンと叩く。そのご自慢のエンジンは、今静かに止まっていた。
「それにしても、変わった趣味ね。サメの出る海域で泳ぐなんて。それとも、新しい自殺の仕方? お望みならまた海に叩き込んであけるけど」
「断固拒否する。あ、そうだ。そういえば、サメ!」
水面には、ミニチュアの宇宙船を思わせる銀色の流線型が、プカプカと浮かんでいた。ちょっと生臭い。
「これ…… ルリ、あんたが……」
「ううん、私がやったんじゃないわ。ここ通りかかったらもうこんなになってたの」
「ボーイ、君がやったんじゃないか。覚えてないかい?」
「コンガ……」
赤い服をまとったコンガが、静かに浮いていた。
「言ったはずだよ。鼓動知る能力を使って人を傷つけてはいけないって…… まあ、今回は相手が魚だったから、能力没収にはならなかったけど」
最初のコメントを投稿しよう!