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「へ、鼓動を知るって、鼓動の場所が分かるっていうだけじゃ……」
「『鼓動を理解する』って言った方が良かったのかな。それは、鼓動に関わるすべてをマスターするってことさ。それこそ、鼓動をとめる方法も、鼓動からある程度人の気持ちを読むこともね」
発作を起こしたように震え始めた体を、和樹はなんとか抑えようとした。口元を押さえ、吐き気を抑える。
『人間に危害を加えないって…… 鼓動を知る能力でどうやって人を傷つけられるんだよ』
コンガと初めてあったとき、言った言葉を思い出す。
『ほほほ。あんた、バカでいい奴だねえ。そのままでの君でいてくれよ』
その後、コンガは意味ありげな笑みを浮かべていた。
水面浮かんだサメの死体に当たり、ボートが小さな音を立てた。サメの青白い腹が、月に照らし出されている。
「やろうと思えば、このサメと同じくらいの人間を手も使わずに殺せるよ、ボーイ」
その言葉は、サメに食われかけたことよりも恐かった。確かに、力が欲しいと思ったけれど、間違って無差別殺人してしまうような能力なんて欲しくない。
「どうしたの? 目が半分イッちゃってるわよ」
ルリはもう一枚毛布を掛けてくれたが、振るえは止まらなかった。
「俺が、殺したんだ。これだけの数、いっぺんに……」
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