第八章 The Knight meet joker

6/8
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
 和樹は額を船底に擦りつけた。思い切り拳を叩きつけるが、ゴムボートはボヨンという鈍い音しかしなかった。 「父親に……利用されてるんだ! ルリ。葉巻島へ向かってくれ。たぶんそこにミコトがいるんだ」 「なんだか、わけありみたいだわね。葉巻島? 言われなくてもそうするわよ。今回の目的は鎮乃目の取材だもの」 「そうなのか?」 「鎮乃目は、医者としては優秀だけど、色々黒い噂があるのよ」 「なるほど。優秀医師の闇の顔を取材していたこともあるっていうわけか、あんたは」 「あるというか、続行中よ。本当は、黒瀬の方を調べてたんだけど、その関係で鎮乃目のことを聞いてね」  ルリは、和樹に自分が調べてきた事を教えた。黒瀬が裏で武器の売買をしていること、鎮乃目がその黒瀬と?がっていることを。 「鎮乃目の奥さんも五年前に姿を消してる。二人で公園で言い争っているのを見たっていう目撃情報を最後に」 「鎮乃目の奥さん? つまり羽原の母さんか」  はああ、と和樹は溜息をついた。 「羽原、自分の家のこと何もあんまり教えてくれなかったなあ。そういうこと話すほど俺って信頼されていないのか」 「裏がありそうな事件より、女のコが自分の事をどう思っているかを最初に考えちゃうあたり、恋する少年ね」     
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!