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和樹は額を船底に擦りつけた。思い切り拳を叩きつけるが、ゴムボートはボヨンという鈍い音しかしなかった。
「父親に……利用されてるんだ! ルリ。葉巻島へ向かってくれ。たぶんそこにミコトがいるんだ」
「なんだか、わけありみたいだわね。葉巻島? 言われなくてもそうするわよ。今回の目的は鎮乃目の取材だもの」
「そうなのか?」
「鎮乃目は、医者としては優秀だけど、色々黒い噂があるのよ」
「なるほど。優秀医師の闇の顔を取材していたこともあるっていうわけか、あんたは」
「あるというか、続行中よ。本当は、黒瀬の方を調べてたんだけど、その関係で鎮乃目のことを聞いてね」
ルリは、和樹に自分が調べてきた事を教えた。黒瀬が裏で武器の売買をしていること、鎮乃目がその黒瀬と?がっていることを。
「鎮乃目の奥さんも五年前に姿を消してる。二人で公園で言い争っているのを見たっていう目撃情報を最後に」
「鎮乃目の奥さん? つまり羽原の母さんか」
はああ、と和樹は溜息をついた。
「羽原、自分の家のこと何もあんまり教えてくれなかったなあ。そういうこと話すほど俺って信頼されていないのか」
「裏がありそうな事件より、女のコが自分の事をどう思っているかを最初に考えちゃうあたり、恋する少年ね」
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