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彼女の言葉に頬が熱くなる。たぶん、真っ赤になっているのだろう。和樹は慌てて一つ咳払いした。
「い、いいから続けてくれ。羽原の母さん、見つかったのか?」
「いいえ。迷宮入りになってるわ。公園の隅に、焚き火みたいな跡があったっていうけど、死体を燃やした跡はないし」
「すげえな。そんなことまで調べるのか」
「そうよ。夜明けにようやく自宅に帰りついた刑事を玄関先で待ち伏せして質問攻めにするのが仕事ですから」
「迷惑な」
(そうか。羽原の母さんが……)
和樹はギリッと歯を握り締めた。写真に写った鎮乃目の写真を持ってくればよかった。そうすれば五寸釘を打ち付けることができたのに。鎮乃目が、羽原の母さんの失踪に関係しているのに違いない。あいつはどれだけ羽原を傷つければ気が済むんだ?
「まあ、なんにせよ、詳しいことは本人に聞けばいいでしょう」
けろりとルリは言った。
「黒瀬の会社に入り込んだのに比べれば、葉巻島なんて軽い軽い! さあ、いきましょう!」
ルリはバッグを開けた。ずるずると引越屋の作業着が引きずり出される。
「す、すげえ。用意万端」
「おほほほ。競争が激しい報道業界で生き抜くにはこれぐらいしないとね。変装してもぐりこむくらいは記者の乙女のたしなみよ」
「明らかに違法行為だけどな」
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