猪山

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 因みに叔父は祖父に対抗心を燃やし、お金もないのにヘルメットとグローブ、そしてゴーグルまで買ってくれた。 一言苦言を(てい)するなら、自分と色違いのお(そろ)いにするのはやめて欲しい。 「大分様になってきたな」  朱理が麓に着くと、上から声がした。  顔を上げると、悠輝が空中に立っている。 「お帰りなさい。おじさんも、『(くう)()(じゆつ)』上手くなったね」 「何だそれ?」  叔父は階段を下るように、空中から降りてくる。彼は鬼多見家で験力と呼んでいる異能力を使い、空中に足場を作り出しているのだ。  しかし、この技もまだまだ不完全で、空中に足場を固定する事は出来るが、エレベーターのようには動かせない。  その代わりと言うわけではないが、駆け下りる事が出来るくらいには瞬時に作り出せる。 「『()(りよう)(せん)()』ってアニメの主人公が、空中を歩く技の名前。  あ、そうだ、今日、開成山公園でそのイベントをやるんだよ。(せつ)()さんも出演するの」 「ん、()(どう)が? アニメのイベントだろ、何であいつが……  また便乗してんのか?」
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