75人が本棚に入れています
本棚に追加
少しションボリしつつ、彼もMTBで迎えに来ていたので、二人で猪山の麓を廻って戌亥寺へ向かう。
山の東側に設けられた駐車場は使わず、自転車を担いで石段を上がる。
段数が結構あるので大変だが、これも修行の一環だ。初めは叔父や祖父に支えてもらったが、今では独りで運べるようになった。
MTBを祖父が造った駐輪スペースに止めて、庫裡に入る。
「ただいまぁ」
と言うと、母の「お帰り?」という声と、二匹の犬の吠える声がした。
茶の間の襖を開けると、中から冷えた空気と共にクロシバと白い秋田犬が飛び出して来て、朱理にじゃれつく。
「ボンちゃん、マサムネくん、ただいま」
クロシバのボンちゃんこと梵天丸は八千代で悠輝が飼っていて、一緒に郡山に連れてきた。秋田犬の政宗は祖父が飼っている。
二匹とも今年で三歳になる。政宗は紫織を乗せて走れるほど大きくて力持ちだが、後から来て自分よりも大分小さい梵天丸を上位と認めている。
そのため、梵天丸に遠慮しながら朱理にじゃれている。
最初のコメントを投稿しよう!