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「まぁたやってる。よくもまあ、毎回飽きもせず、懲りもせず、続けられるっすねぇ。オレがアンタならもうとっくに諦めてるっすよ」 「う、うるせぇ! 此処で匙投げたら永遠に終わらねぇじゃねぇか」  照れ隠しからか、上擦った声と真っ赤な顔で、もっともらしい反論を頂戴してしまった。もっともらしい反論ではあるが、「もっともな反論」と言えない理由はあって、だからオレは徒労だとからかってしまうのだけど。  オレの幼馴染で、この世界の王様たるミスティが放棄してしまえば、天使との戦争は終結しないだろう。永劫「魔族は悪」という分かり易いレッテルを貼られ続け、天使にも人類にも疎まれ続けた挙句、本来中立を貫く神族の恩恵も頂戴出来ない。  しかし所詮天使は私欲の為に動く事を止めず、人類の固定概念は早々容易に払拭されないだろう。あくまで人類にとって魔族は人を陥れ、人類の不幸を糧として生きる性悪な生物である。そして天使はそれを利用し私腹を肥やし、戦闘欲求を満たすに最適な魔族へ攻撃を仕掛ける。  オレが生まれるより遥か昔、ミスティが魔王様になるよりもずっと前から変わらない歴史。ミスティがどれ程頭が良く、やさしく、戦争の終結だけを優先して天使側に歩み寄ろうと早々容易に変えられるものでもなかろうに。  ミスティは、無駄だと言う幼馴染にして一応は親友を名乗れるくらいには親しいだろうオレの言い分を聞いてもくれず、今日も今日とて自分の魔力を消費し、自分の生命力を削って、必要となれば天使に己の身を売る様な真似をして。魔族のささやかな平和を勝ち取ろうと尽力している。  オレの望みは。  いや、オレだけじゃない。ミスティが大切に思っている魔族達全員の望みは、そんな事ではないというのに。  勿論平和は欲しい。天使からの攻撃、人類からの侵略に怯えず暮らす毎日はどれ程快適かと夢想した事は誰しも1度はあるだろう。かく言うオレだって特に餓鬼の頃は考えていた。  天界からの攻撃、人類の侵略。そうした諸々に怯える事なく日々穏やかに暮らし、ミスティとただただ無邪気に楽しく過ごせる日々が訪れればどれ程幸福か、と。  しかしそれは愛しい魔王様を、大切なミスティを危険に晒してまで勝ち得たい物ではないのだ。
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