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「つーかアンタまた、こんなずさんで、他の魔族にばら撒いたら暴動を起こされる事間違い無しな策を練ってるんすか? 頭良いんでしょ? いい加減学習しなよ」  幼馴染という立場もあるけど、魔族に不敬罪は存在しない。魔王という立場こそあれ、他の魔族と魔王の距離は近くて、まるで同年代の友人や近所のやさしいお兄ちゃん、自分の子供と同じ様な距離感で気軽に慕われている。  そうは言っても、ここまで堂々と馬鹿にしてしまうのは流石にオレくらいだけれど。  ミスティの隙を突いて奪った親書をわざとらしくヒラヒラと頭上で振ってみせる。飛ばれたり魔術を使われれば簡単に取り返されてしまうけど、普通に手を伸ばすだけでは身長差からミスティには届かない。  どうせまた本人に言わせれば真剣、オレや他の魔族に言わせればとんでもない策を真剣に練っているのだろう。天使に提案すればこの戦争が終結すると信じて。  その結果散った歴代魔王の話など授業でも聞かされ、文献にも大量に残っているというのに。何故歴代魔王は小さな魔獣の子供1匹の命さえ大切に大切に愛しむというのに、己の命は使い捨てで安価に量産される魔道具みたく、気易く扱ってしまうんだろう。 「返せ。それは天使長に送る手紙なんだから、シィラでもあまり雑に扱う様じゃ許さねぇぞ」 「うっわ。天使長に送る手紙って絶対ろくでもないの確定じゃん」  何せこの魔王様には前科がいくつもある。ほとんどは有能でミスティに心酔している騎士団長を筆頭に、様々な人物によって未然に阻止されているけど、数回、防ぎきれず寸での所で助けに入った事もある。  だから読む前から内容には薄々察しがついてはいるけど、ミスティに実力行使で奪い返される前に本人曰く大切な手紙へと目を向ける。  目を向けるなり、自分の手と魔力を使って、丹念に、丁寧に、ビリビリと破り、刻み、仕上げとばかりに火魔法で灰にした後、水魔法で灰も溶かしておいた。この間1分たらず。魔力が人より多く、発動も早い己の体質、速読を身に付けておいた事、それからミスティの文字が丁寧で読み取り易い事全てに感謝した。それがあるから、一瞬でここまで出来る。 「イテ。何するんすか」  そんな感慨に浸っていれば右手に少しの違和感。極々微量の電気魔法が投げ付けられたのだと遅れて悟り、大して痛くもないけれど不満を訴える。
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