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次の日登校して俺がまず何をしようとしたかと言えば、京司に一発くらわせてやることだ。暴力はよくないというのは重々知っているが、それでもなくならないのはこういう小さな暴力を抑制しないからなんだと俺は思うね。まあやろうとしている身で言うのはどうかしているけど、俺には権利があるわけだ。
約束は破ってはいけない、とまでは言わない。しかも、遊びに行こうくらいなら、体調不良とかバイトのシフトを勘違いしていたとか、そういうことならしかたないと思える。だけどあいつは俺が待ち合わせ場所に到着するのを見計らっていたかのように電話してきて、あろうことか「ナンパに成功しちゃったテヘッ」とか言ってそのままスマホの電源を切りやがったんだ。友人全員にアンケート取ったっていい。絶対俺には権利がある。
初めて同じクラスで良かったと思ってる。後ろから近づいて、目が合った友人に口元に指を当てて静かにしてろとサインを送る。よしばれてない、後ろから一発はたくだけで許してやる俺偉い。心は狭い知ってる。
くらえ!
「あらよっと」
「避けんなよ!」
「いや避けるよ避けられんだから」
「お前昨日自分が何したか忘れてんじゃないだろうな?」
「昨日? 恋を追いかけてたかな」
「俺との約束をすっぽかしたんだよナンパ成功したからってな」
「うわクソ野郎だな相変わらず」
「一発殴られてやれよ贖罪として」
村松と沢村が賛同してくれるが京司は全く反省している素振りがない。
「いやでも俺だよ? 愛に生きる俺だよ? 逆に良い女がいたけどお前との映画優先したわーって言ったらお前らどうよ?」
「引くな」
「気持ち悪い」
「救急車呼ぶ」
「だろ?」
「まあじゃあしかたないか」
「いや納得すんのかい」
「千紘は京司に甘すぎるだろ」
「そうか?」
腹は立ってるけど妙に納得してしまったし、そもそも怒髪天を衝くレベルではないし、もうなんか慣れてしまってる。挨拶程度で当たればラッキーくらいに思っていたから、まあこんなもんだ。
京司とはもう小学校からの付き合いで、初めて会った時にはもう片鱗は見えていたし、中学校に上がる頃にはもうこれがほぼ完成していた。本人が言うにはナンパではなく愛らしいが、やってることはナンパと変わらない。好みの女を見つけて、声をかけてデートしてセックス。まあちゃんと付き合うのだけは偉いんじゃないかね。流石は愛に生きる男。
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