第2章

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「サクラちゃん!」  身軽く駆けてきて両腕をひろげ、腰まわりにピョンと飛びつく。その妹を抱きとめたところで、全開になっている窓の向こうから、鈴なりになっている子供たちをどかしつつ小向夫人が顔を覗かせた。櫻李はそれへ向かって頭を下げた。 「あ、こんにちは。妹がいつもお世話になってます」 「あらまぁ、櫻李くん! すっかり立派になっちゃって。お迎えご苦労さま」  腰まわりにかじりついている妹をはがして向きを変えさせる。頭に手を添えて軽く促すと、菊姫は自分からペコリと頭を下げて元気よく挨拶をした。 「先生、ありがとうございました! さようなら!」 「はい、さようなら。菊ちゃん、今日は優しいお兄ちゃんがお迎えでよかったわねえ。気をつけてお帰りなさい」 「はぁい!」  菊姫は、小向夫人の周辺に群がっている友達にも笑顔でバイバイと手を振った。途端にいっせいに返ってくる、元気いっぱいの応答。  大袈裟すぎて近所迷惑が心配になるほど盛大な見送りを受けつつ、櫻李は菊姫を連れて習字教室をあとにした。菊姫の手にあった習字道具入りのバッグを櫻李が持ってやると、すかさず手を繋いだ異母妹は、嬉しそうな顔で見上げてきた。  
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