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第2章
(1)
自宅で子供たちに習字を教えている小向さん宅まで徒歩5分。
プラッと歩いて到着したタイミングで、ちょうど子供たちの何人かがワイワイと賑やかに玄関先からおもてに出て来た。習字教室用に増築した側の副玄関のほうである。
開け放たれた門を通り抜けたところで、その副玄関から出て来た彼らと目が合った。すると、なかのひとりが途端に「あ!」と声をあげて引き戸の向こうを振り返り、でっかい声で呼ばわった。
「ヒメちゃん、お迎え~っ! カッコイイお兄ちゃん来てるよっ!」
直後に教室の窓がガラッと全開になり、屋内にいた子供たちがいっせいにワラワラと顔を出して鈴なり状態に。
むろん、けなされるよりは褒められるほうがいいに決まっているし、好意的に見られるに越したことはない。だが、だからといって小学生に騒がれても少しも嬉しくはなかった。
殆ど珍獣扱いで注目されて反応に困っているところへ、群がるちびっ子たちを掻き分けて、妹の菊姫が満面の笑顔で飛び出してきた。
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