花守の魔女

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花守の魔女

 また、お父さんとお母さんがケンカをしてる。  あたしは部屋の中で言い合う二人を見ていたけれど、すごくうるさくて嫌になっちゃった。  耳をふさぎながら玄関で泥だらけの靴を履いて、なんにも持たずに家を飛び出した。特に行くあてもなかったけれど、あたしはお父さんとお母さんがケンカをするのを見るのがしんどかった。  どこに行こうかな。  アパートに背中を向けて、日が暮れかけた道を一人で歩く。こうやって、一人で家を飛び出すのははじめてじゃない。もしかしたら、あたしがいなくなったのに気づいて二人がケンカをやめて迎えに来てくれるかもしれない。そんな淡い期待もあった。 「さむーい」  ほぉっと息を吐き出すと目の前に白い雲ができる。  冬になるちょっと前。秋の終わり。帰りのチャイムが響く中、あたしは帰る道とは逆にどんどん歩き続けた。どんどんどんどん歩いて行く。  お父さんとお母さんは、あたしを追っては来なかった。 「あーあ」  一度だけ振り返ったけれど、二人の気配は全くなくて、あたしは一度足を止める。
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