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スサノオのことだから、疑いもせず、そのまま去ってゆくだろうと読んでいた。
おおおん、うわああああん。
未だに響くスサノオの泣き声を、自室の窓で頬杖をつきながらクシナダは聞く。
小指に巻き付けているのは、一本の髪の毛。
スサノオの髪の毛。
(いつか、髪の毛が清潔になったら、考えますわよ)
くるくると巻いた髪の毛を、もう片方の手でつまみ、きゅーっと引っ張った。
**
スサノオは泣いていたが、不意に、きゅっと引き締まったような気がしたことである。
きゅーっ。
どこが引っ張られて、どこが刺激を受けたやら。
なにか尻の穴がきゅっと締まるような気合が生まれた。
(泣いている場合ではない。俺はスサノオ。なすべきことをするのだ)
唐突になきやむと、凄い勢いで歩き始める。
またたくまにスサノオは、岩山を降りてしまった。
「なすべきこと」が何なのかよくわからないまま、とにかく突き進みたい気持ちが沸いてきて、進まずにはいられない。ずんずんずんずん歩いた。
**
「ふふふ」
クシナダは嫣然とした笑みを浮かべ、髪の毛を小指に巻き付けては、きゅーっと伸ばす作業を繰り返し続けるのだった。
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