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 「娘が何人いたのか忘れました」  めそめそと泣きながら老婆が言う。  「このクシナダが最後の一人です。それももうじき、消えてしまうのです」  爺も鼻を垂らしながら言った。  凛とした顔を崩さず、クシナダは酌を続ける。  良い乳だ触りたい――スナノオはちらちら見る。見ながら、つがれた酒を飲み、料理をつつく。  それでも耳には嫌でも老夫婦の愚痴物語が入る。  つまりこうだ。  ヤマタノオロチというのがいて、どういうわけかアシナヅチ・テナヅチが大量生産した娘を気に入った。  毎年一人ずつ生贄を所望し、そむけば災い起こすと脅すらしい。  それで、泣く泣く老夫婦は一人ずつ娘を差し出した。  元気だったころは一人失えばまた一人生産することができたのだが、今となっては見た通りのしなびた爺婆、できるわけもない。  「これ以上がんばったら死んでしまう」  と、二人して言い合っている。本当に大変だったらしい。  (いっそのこと、生産をやめて別の趣味に没頭するとかしたほうが、より良い人生になったのではないか)  と、ひとごとながらスサノオは思ったが、今は黙っておいた。  クシナダの乳の谷間が素晴らしいのである。一秒の無駄も惜しい。網膜に焼き付けておかねばならぬ。  (いい女だ抱きたいいや抱く)  と、スサノオは勝手に決めている。  こうなったらクシナダの気持ちなどどうでも良い。俺がやりたいからやるんだ。
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