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4
さて、スサノオはクシナダの入れ知恵通り、酒甕をヤマタノオロチの巣に置いた。
そして、離れた場所の岩陰に隠れ、しばらく待った。
やがて、ずりずりずるずると音がして、夜目にも恐ろしい八つの頭を持った巨大な蛇が山の向こう側からはってくる。
生贄はどこだ、娘はどこだと探しているが、見当たらないので怒っている。
八つの頭がみんな同じ表情だ。
ぶつぶつ怒っているが、やがて八つの頭は同時に酒の甕を見つけた。
およ、と、表情を一斉に変える。八つの顔がみんな同じ顔をする。
**
「あの蛇、酒好きなんですよ」
スサノオの髪の中で、クシナダは呟いた。
「ほんとに酒好きで、そのおかげで何人もの蛇の奥さんに逃げられちゃってるんです」
ほう、とスサノオは相槌を打った。
蛇は八つの頭を同時に酒甕に突っ込んで、ぐびりぐびりと飲みだした。
凄い勢いである。蛇の体の形状のため、飲み下すさまがよく分かる。
ぐびり――喉から膨れ、その膨らみは食道に沿って胃に落ちる――以外に胃は下の方にあるんだなあ蛇野郎は――胃はたちまち膨れ上がり、ヤマタノオロチは蛇というよりツチノコのような見た目になった。
(明らかに飲みすぎだな)
スサノオは思った。
ものの数秒で蛇は酒を飲みほして、八つの頭は同時に同じぐだを巻き始めた。
みんな赤くほてった顔で、これも見事に同じである。
ういーひっく、こんちくしょう、何で俺は蛇なんだ、ばっきゃろー。
荒れ気味だ。
悪酔いしたら物にあたるタイプらしく、あちこちの岩に頭突きをしたり、尻尾をぶつけたりする。
どかんばりばりぱらぱらと、岩が破壊された。
確かにこれは、奥さんはやりきれまい。スサノオは納得する。
そのうちヤマタノオロチは寝た。
腹を天に向けて、たいそうだらしのない様子である。
尻尾が時折ばたんばたん動くが、やがてそれも静かになった。
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