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 「今です行きましょう」  クシナダの指示に従ってスサノオは太刀を抜いてヤマタノオロチに近づいた。  「こいつの弱点は頭です」  とクシナダが言うので、とりあえず寝ている頭のひとつを適当に斬ってみる。ばすっ。  ころん、と酔いどれ頭が転がったが、すぐにうにゅっと新しい頭が生えて来た。何事もなかったかのように酔いどれ顔でいびきをかいている。  ぐー、ぷうっ、ぱちん、ふがー。  八つの頭が、同時に同じ大きさの鼻提灯だ。  ばすんばすん次々に斬ったが、すぐに次の頭が生えてきてキリがない。さすがのスサノオも疲れて苛々した。  「ヤマタノオロチの頭は見た目は八つですが、本当の頭は一つです。それを切り落とさなきゃだめなんです」  と、クシナダが淡々と言った。  本当の頭と言っても、どれもこれも同じ顔をしている。  おまけに、これだと思ってひとつ斬ったら、すぐにうにゅっと生えてくるので、そのうちあれっ、どれを斬ってどれが斬ってないやつだったっけ、と、混乱してくるのだった。  実に厄介な。  「方法はあります」  クシナダは言った。  まずはお尻の穴を探ってごらんなさい。糸があるはずです。クシナダはそう言う。  なんだと尻の穴から糸だと。半信半疑でスサノオは、巨大蛇の頭側から尻尾側に移る。  でろーんとだらしなく腹を上向けて寝ている蛇。  尻尾部分にゆくと、簡単に尻の穴らしい部分が見つかった。あった、これか。  「どうれ……」  スサノオは棒きれで尻の穴を広げてみた。  ウウンヤメテヤメナイデと、八つの頭が同時に同じ寝言を言った。  いやいや指で探ってみると、手ごたえがある。引っ張り出してみると、銀に輝く糸が抜けて来た。  強靭な糸である。蛇の尻から出て来た糸を持ち、スサノオは、さてこれをどうしたものかと思った。 **  「引っ張って、縮んだ頭が本物です」  クシナダが淡々と告げた。  は。  スサノオは聞き返す。  同じことをクシナダは言った。  尻から出た糸を引っ張ったら、本物の頭が引っ込む……。
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