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6
半信半疑でスサノオは糸を引っ張った。きゅーっ。
すると、眠っている頭の中で、たったひとつだけ、するすると引っ込んでいったものがあった。
糸を引っ張れば頭が引っ込む。
愉快になった。きゅーきゅー引っ張って、はっと我に返った時、肝心の本物の頭は引っ込みすぎており、斬ろうにも斬れなくなっている。どうしたものか。
「糸を離せば良いのですよ」
またクシナダが告げた。
それでスサノオは引っ張り切った糸から、いきなり手を離した。
ぷるるるるるる、と巻き上げるような勢いで糸は蛇の尻の穴に収納されて行き、同時ににょにょにょと引っ込んだ頭が伸びてくる。
ぷるるるるるる、るっ。
いきなり糸が半端なところで止まってしまった。
「少し引っ張ってから離せばまた巻き取ってくれます」
クシナダが口を挟んだ。
それでスサノオは言われるままに、もう一度つんと糸を軽く引いてから離した。
ぷるるるるるる。しゅるるるるるるる。
見る見るうちに糸は尻の中に収納され、やがて見えなくなった。
その代わり、引っ込んでから、また伸びて来た本物の首が、他のよりも頭一つ分飛び出して長くなって、ぐーぐーいびきをかいているのだった。
「勢いよく糸が引っ込んだから、ちょっと頭が飛び出しちゃったんですね」
はい、アレが本物です。アレをやっちゃってくださいませ。
スサノオはクシナダの言われるままに、その頭をちょん切った。
ぐーぐー寝ていた頭たちは、本物の頭を切りとられた瞬間寝息を立てなくなり、闇の中は静まり返ったのである。
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