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7
さてスサノオは、死んだヤマタノオロチの腹をさばいてみた。
糸がどういう仕組みになっているのか知りたかったからである。
ところが、切り裂いたお腹の中には糸は見あたらず、代わりに銀に輝く剣が収まっていたのだった。
「草薙の剣ですね。どうぞお納めくださいね」
クシナダが眠そうに言った。そろそろ空が白みかけている。もうじき朝なのだ。
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空はやがて薄紫に染まってゆき、徐々にさしてくる赤い朝日に岩山は照らされた。
斜めに伸びた薄い影は、やがてゆっくりと動いて短くなってゆく。
一仕事終えたスサノオは、そろそろやりたいものだと思った。
それで、頭にささったクシナダに、おい元通りの姿になって抱かれろと声をかけた。
しかし、返事は返ってこない。
不審に思って髪を探ると、確かに櫛が取れた。しかし、これはただの櫛である。
(クシナダヒメが櫛になってしまった。なんということか)
うおおおおお。
うおおおおお。
スサノオの悲しみの咆哮は三日三晩続き、岩山に響き渡ったという。
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あなたの髪は虱のお宿。
わたしの居場所はありません。
身代わりの櫛を残して、自身は自宅に戻っていたクシナダである。
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