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 さてスサノオは、死んだヤマタノオロチの腹をさばいてみた。  糸がどういう仕組みになっているのか知りたかったからである。  ところが、切り裂いたお腹の中には糸は見あたらず、代わりに銀に輝く剣が収まっていたのだった。  「草薙の剣ですね。どうぞお納めくださいね」  クシナダが眠そうに言った。そろそろ空が白みかけている。もうじき朝なのだ。 **  空はやがて薄紫に染まってゆき、徐々にさしてくる赤い朝日に岩山は照らされた。  斜めに伸びた薄い影は、やがてゆっくりと動いて短くなってゆく。  一仕事終えたスサノオは、そろそろやりたいものだと思った。  それで、頭にささったクシナダに、おい元通りの姿になって抱かれろと声をかけた。  しかし、返事は返ってこない。  不審に思って髪を探ると、確かに櫛が取れた。しかし、これはただの櫛である。  (クシナダヒメが櫛になってしまった。なんということか)  うおおおおお。  うおおおおお。  スサノオの悲しみの咆哮は三日三晩続き、岩山に響き渡ったという。 **  あなたの髪は虱のお宿。  わたしの居場所はありません。  身代わりの櫛を残して、自身は自宅に戻っていたクシナダである。     
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