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アシナヅチとテナヅチの老夫婦は、娘ばかりに恵まれた。
それも器量の良い娘ばかりであり、もし全員が無事に嫁ぎ子を成すことができていたならば、今頃はちょっとした一族になっていたことだろう。
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「うちの娘ばかりなんですよ」
長旅のはてに、フケだらけ虱だらけの頭となり、汚らしい姿で一晩の宿を求めるスサノオノミコトを相手に、老夫婦は愚痴る。
お酒と料理を提供し、たいそうなもてなしようだ。
スサノオの酌をするのはアシナヅチとテナヅチの娘、クシナダヒメである。
すらっとした姿が目をひく、なかなかの美貌だ。
さっきからスサノオは、クシナダヒメの乳やら尻ばかり見ている。もはやムラムラ極まれり。
いっそのこと、料理の皿をひっくり返す勢いで押し倒したいところだが、目の前にはしなびた老夫婦が辛気臭い顔をして、ぐちぐちぐちぐち何か言っている。
いかにスサノオであれど、老夫婦の前でその娘をモノにするなど、できなかった。
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