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LAST SUMMER。これでおしまい。背中の汗に張り付くシャツ、アイスが溶ける時間、遠くに揺らぐ蜃気楼。ぜんぶ、もう知ることはない。これが、二人きりで過ごす最後の夏だから。
目が覚めた時、夏の香りが凄まじかった。生温い空気が体に入り込んで、なんだかもう、これで終わりにしようと思ったのだ。呟いて、笑いかけると、犬井さんは「そっか」と無理やり口角を上げた。笑っているのかもしれない。でも、泣きそうに目が揺らいでいるので、ちっとも微笑んでいるようには見えなかった。私は、
「うん。これでおしまいにします」
見本のように完璧に微笑んであげた。さすれば犬井さんはようやく表情を崩し、眉を垂れて、
「二人で過ごすのも、終わりってこと?」
「そう。最後の夏。もう、いい。いいの、終わりにしましょう」
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