神様と出会う

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「そうだよ。僕にできることなんてそれくらいで、実際にこれからを良いものにしていくのはその人自身なんだ。神様にお祈りしたら、神様もその人のことを思ってくれるけど、形にしていくのは結局その人だから。君のこれからだって、君が作っていくものだしね。僕ができるのは、少しだけその人の気持ちに寄り添ってあげることだけ」  必要な時に少しだけ背中を押す力になることが、彼にできる精一杯のことなのだという。  私はそれを聞いて神様は万能ではないことを知ったけど、その代わりに神様にお祈りをしたときに、少しだけ心強く思える理由を知った。  やがて、少しずつ日が傾いてきた。随分長い時間此処にいたんだなとしみじみ思いながら、私はしおりを挟んで文庫本を閉じる。  「そろそろ帰るのかい? それが良いね、暗くなると危ないから」  彼は私がカバンを持つのを見ながらそう言った。  「今日はありがとうございました。……なんだか、気持ちが軽くなったような気がします」 「それなら良かった。さて、気を付けて帰るんだよ。辛くなったらいつでも来て良いからね。見えなくても、僕はいつでも此処にいるから」  この神社から離れたら、もう二度と彼には会えないのだということを思い出して、私は鳥居をくぐる前にもう一度後ろを振り返った。  「神様」 「ん、どうしたの?」  彼はまだそこに立っていた。  「私、今日あなたに出会えてよかったです。本当にありがとうございました」  きちんと顔を見てお礼が言える、これが最後のチャンスだ。     
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