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そうして案の定さっそく目をつけられて今に至る。 「あんま調子こいとるといてこますぞ、ゴルァ!」 “いてこます”がどういう意味か俺にはわからないけど、この状況でイイ意味なはずがない。絶対殴られる。ああ、俺の高校デビューは半日で終わった…むしろ無事に帰れる気がしない…ごめん父さん母さんこんなことならもっと真面目に高校探して努力しとくんだったよ… 激しい後悔に苛まれながら俺はギュッと固く目を瞑った。しかし、いつまでたっても拳は飛んでこず、俺は再び恐る恐る目を開ける…。 「…なぁ、1年のガキいじめるほど暇してんならオレの相手してくれよ。まさかさっきの脅し文句はその無駄に派手なトサカみたく威嚇のためのハッタリじゃねぇよなぁ?」 いつの間にかモヒカン先輩の背後に一人の少女が立っていた。恐らく俺より年上の先輩なのだろうがそんなに大柄ではないその女先輩は、俺の胸ぐらを掴んで締め上げているモヒカン先輩をまるでゴミ山を見上げるかのような瞳で見上げていた。 だが普通に体格差と男女の力の差を考えるならば、この謎の女先輩がモヒカン先輩に勝てるとは到底思えない。しかし彼女の顔を見た途端、モヒカン先輩の顔から生気が消え失せた。 モヒカン先輩は顔をひきつらせながら後退りをし、俺の胸ぐらを掴んでいた手を離す。俺が支点を失って尻餅をついてから再び顔を上げる頃には、 「ま、まさかぁ…俺ごときが姐さんとやりあうなんて…!そんなの、命が幾つあっても足りませんって…」 と意味深な発言を残して、まるで尻尾を巻いた犬のようにモヒカン先輩は逃げ出していた。 この女先輩が一体何者なのかは俺にはわからない。ここの生徒の大多数と同じように時代錯誤なくるぶしまであるロングスカートのセーラー服と顔半分を覆い隠すマスクという出で立ちから察するにこの学校のいわゆるスケバン的な存在なのかもしれない。 彼女はおそらく世間一般から見たら後ろ指を指される存在だろう…でも、そんなことはどうでもよかった。 彼女を見た瞬間、俺の中にビビビッと稲妻が走ったんだ。力強い瞳、凛とした凄みのある立ち姿、女子にしては少し低めの声、やや乱暴な口調、そしてマスクの上からでも充分にわかる端正な顔立ち。その全てが俺の網膜と鼓膜を通して脳内に焼き付いた。 それは俺が生まれてはじめて一目惚れをした瞬間だった。
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