だめだめ、だめよ。

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だめだめ、だめよ。

 わたしは隣を歩いていたお友達の手を引っ張る。 「おっとぉ?」  引っ張られた拍子で後ろによろめくお友達。ぽすん。私に寄りかかった。 「なになに、どしたー?」 「だめだめ、だめよ。鳥居をくぐる前はちゃんと一礼しないと」  そう言ってわたしはお友達の後頭部に手をあて、わたしと一緒にお辞儀させる。 「あ、そっかぁ、忘れてた」 「かみさまへの礼儀だよ。きちんと作法を守らないと、叶うものも叶わなくなっちゃう」  わたしは今、お友達と一緒に近所にある由緒正しき――まぁ、若干寂れているというか、古色蒼然というか、そんな趣ある神社に赴いている。  曇天の寒空の下、ここにはいま、わたしとお友達しかいない。ひゅー、時折吹く風が、わたしとお友達にダイレクトに纏わりつく。人いきれなんかまったくないから、体感的にとっても寒く感じる。ぶるりと身体を震わせ、わたしはお友達の手をとった。 「ん、さむいん?」 「さむい」  手袋をしてはいるけど、わたしの手は冷え切っていたんだろう。お友達がわたしの手を両手で包み、ぎゅぎゅってしてくれた。そしてわたしを抱きしめてくれた。 「……あったかい」 「うん。あったかいねぇ」     
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