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さよならのかわりに
「好きです」
緊張のあまり跳ねる心臓とは裏腹に諦めるための告白だった。
傾いた夏の日差しを遮っていたカーテンが揺れる。お化け屋敷と化していたこの教室も片付け終わってしまえばベニヤ板や段ボールは部活仲間たちによってとうに消え、残るのは光が漏れることのないようにと生徒会から借りてきた遮光カーテンのみだ。
先輩が取り外したそれを受けとるのが今の私の仕事だった。
これが最後の機会かもしれない。
お祭り気分に乗せられて、恋心にそう急き立てられたことを否定はできない。
でも、夏の大会で引退した三年と顔を合わせることはもうほとんどないだろうと思えばこの機会を逃せないのだ。
一年先の未来を語る先生たちの忠告に実感は沸かないが、受験は一大イベントだということくらいなんとなくでも分かっている。そんな大事な時期だというのに恋人になれるなんて思ってない。
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