11人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「う……」
私は包帯が巻いてある右足を、椅子の下に隠した。全治数週間程度の軽い捻挫だが、大事を取って練習には参加しないように言われている。
「だから、お願い!」
「お願いって言われても……一人でやるのはちょっと」
「あ、そこは大丈夫。3年の先輩と一緒にやるんだって、一人でやるのはキツイじゃん」
「知らない人と?」
「別に仲良くなれって言ってるんじゃないんだし、お願い! 頼りになる人、クロロしかいないの!」
そう言って頭を下げる友人の姿を見ていると、なんだか申し訳なくなってくる。私が渋々頷くと、彼女は飛び上がるように喜んだ。
「でも、松崎先輩引退の夏なのに……」
「それは、怪我をしたクロちゃんが悪い」
放課後のテニスコートで、私はテニス部マネージャーである日奈子と一緒にドリングの用意をしていた。視線の先には、他の男子部員を打ち合いをしている松崎先輩がいる。先輩はこのテニス部の部長でエースでかっこよくて……私のあこがれの人だ。
「あー、もう。早く治んないかな、せめて先輩が引退するときだけ治ればいいのに」
「そんなにひどいの?」
「悪くはないんだけど、変なひねり方したから治りが遅いって」
最初のコメントを投稿しよう!