それは魔法の言葉みたいで

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「クロちゃん頑張ってたから、神様がお休みくれたんだよ」 「そうだといいけど……あ」  伸びをした時に、ふっと思い出した。水やり当番の事を。 「ごめん日奈子、私今日から水やりだったの忘れてた」 「花壇の?」 「うん、行ってくるね」 「わかった、先生には私から言っておくから」 「ありがと!」  私は駆け出して……なんてことは出来ないから、早歩きで花壇に向かう。グラウンドはテニスコートから遠く、校舎をぐるっと回らないとたどりつけない。いつもなら走って数分なのに、今日は倍近い時間がかかった。 「あ……」  私が花壇に着くと、もう誰かが水やりを始めていた。こんなに暑いのに長袖のシャツを着ていてとても背が高い男子生徒、その肌は私とは対照的に色白だった。 「あの……」 「ああ、もう一人の?」  じょうろを持ちながら振り返る。逆光でその顔はよく見えなかった。 「遅れてすいませんでした」 「いいよ、別に。じょうろ、そっちにもあるからそれ使って」  先輩が指を指した方に、ボロボロになったじょうろが置いてある。ソレに水をいれて、私は乾いている土に水を撒いた。隣にいる名前も知らぬ先輩は、もくもくと水やりを続けるので私もそれを見ながら、同じように続けた。カサカサに乾いていた花壇はあっと今に潤う。     
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