それは魔法の言葉みたいで

1/6
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

それは魔法の言葉みたいで

 名前負けしているという自覚はある。「麗」と書いて「うらら」と読むこの名前は、初孫の誕生を喜んだおじいちゃんが、とてもかわいいお姫様みたいな子になるようにと願って付けた名前。しかし、大きくなって蓋を開けてみれば、雑で女の子らしさの欠片もない男勝りな子になってしまった。  それでも年を追うごとに少しずつ……という事も一切なく、中学からテニス部に入って朝昼晩天気関係なくボールを追い続け、今ではお姫様というよりは、日に焼けた浅黒い肌とショートカットな楽ちんヘアスタイルな野生児が存在するだけである。名前もあまり呼ばれなくなった、今では「麗」をもじっていつも肌が焼けて黒いから「クロロ」なんて呼ばれている。 「緑化当番?! 何それ」 「グラウンド脇に花壇があるでしょ? 朝、そこに来て水やりする当番の事」 「何で私がそんな事しなきゃいけないの!」  通っている高校には、申し訳程度に花壇がある。毎年適当な花の種を植えて、各クラス持ち回りで二週間程度水やりをする。そんな面倒なこと、やめちゃえばいいのにと毎年どこのクラスからも声が上がるのに、廃止になる気配は一向にない。 「だってクロロ、今暇なんでしょ? 怪我して」     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!