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「小関君って好きな人いるの?」
思いもよらぬ質問で、吹き出しそうになった。
そんなの決まってるじゃないですか。
僕が好きなのは、今まさにこの質問をしている先輩自身ですよ。
そんな僕の気も知らず、僕の顔を覗き込む先輩。
「あ~、やっぱり居るんだ。なんとなくそんな気はしてたんだよね」
先輩はにやり、と口角を上げて得意げに語りだす。
「告白はしたの? 好きって気持ちは、言葉や文字にしないと伝わらないよ?」
思えばこの半年間、先輩のことばかりを考えていた。
それが筒抜けだったのだろうか。
これはひょっとして、先輩は告白されるのを待っているんだろうか。
部室には僕と先輩の二人だけ。
これ以上ないチャンスだと思った。
目を閉じ、深呼吸をする。
言ってしまえ。
「僕が好きなのは、先輩です! 付き合ってください!」
言った。
言ってしまった。
口に出すと、急に気持ちが楽になった。
「えっ……えっ!?」
沈黙の後、先に口を開いたのは先輩だった。
先輩はこれ以上ないぐらい、驚いた顔をしていた。
僕も驚いた。
てっきり、先輩は僕の気持ちに気付いているのだと。
実際はまったくの予想外だったようで、先輩は耳まで真っ赤になっている。紅色に染まった、ぷにっとした両頬に手をあて、ぐるぐると考えを廻らせているようだった。
暫くの沈黙の後、痺れを切らせて僕が口を開いた。
「あの、お返事は?」
先輩は僕と目を合わせることも出来ず、一言だけ返事をしてくれた。
「まずは、友達からでお願いします……」
なぜ、後輩に対して敬語?
しかも、一世一代の大告白の結果、ようやく後輩から友だちへのランクアップ。
先輩が卒業するまであと半年、こんな調子で恋人同士になれるだろうか。
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