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専門の学校に通っていた訳でもなく、孤児だった彼は、私には何も言わないのですが・・・新たな働き口を探すのが大変だったみたいです。
『雇ってくれた店長さんが優しい人で本当に良かったよ、君の為に頑張るからね。』
彼にそう言われた時は本当に嬉しく思いました。
しかし、私は[そんな彼の為にしてあげられる事が何もない]。
私がそう愚痴を溢すと、彼は笑ってこう言いました。
『君は[僕の作ってくれる料理を美味しそうに食べてくれるだけで充分]さ。』
その頃からでしょうか・・・[姉が私達に対して、少しずつ距離を取るようになっていった]のは。
えぇ、[薄々は気付いていた]のです・・・[私達は双子なのですから]。
私達は小さな頃からいつも一緒で性格こそ違います。
ですが、食べ物や飲み物・・・テレビで観る番組や映画のジャンル、香水の香りや好きな色など・・・[私達は好きになるものが大抵同じだった]のです。
そう・・・[好きになる男性のタイプまでも]。
[彼が私の初恋]だったのなら・・・[姉もきっとそうだったに違いありません]。
街へ引っ越して学校へ通い、仕事をしながらも男性とのお付き合いは私達にも何度かありました。
しかし、タイプは似ているけれど、学校のクラスや働く環境が違っていたからか・・・[同じ人を好きになった事は今までありません]でした。
姉は私達を祝福してくれたのですが・・・[私にはそう見えなかった]。
お互い何も言わないけれど、同じ人を好きになってしまったからこそ[分かってしまう事もある]。
『私達は双子で、同じ容姿をしているのに・・・[何故、私ではない]の?』
私には・・・[姉がそう言っているように聞こえた]のです。
彼は気付いていませんでしたが、姉は私達を避けるようになりました。
理由は分かっているのです・・・きっと、私達が2人でいるところを見るのが辛かったのだと。
そうして、私は姉とギクシャクしたまま、彼と付き合い始めてから1年が経ちました。
すると、ある日・・・久々に姉が私に話し掛けてきたのです。
『[今日はハロウィン]でしょう?だから、[彼にイタズラをしない?]』
久々に姉が楽しそうに話すのを聞いた私は、姉のその誘いに乗りました。
彼は飲食店で働き始めて料理の腕が上がり、今日はハロウィンだから、きっと美味しいお菓子を用意しているハズだと・・・姉はそう言ってきたのです。
確かに彼はそういったイベントが好きで・・・イベントがある度に、彼は私をよく街へと連れ出してはお祭りを堪能させてくれていました。
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