1022人が本棚に入れています
本棚に追加
私がどんなイタズラをするのかを尋ねると、姉は嬉しそうに言いました。
『昔、[彼をよく困らせていた]でしょう?』
そう・・・私達は子供の頃、[容姿が同じ]だという事で[よく入れ代わっていた]のです。
[同じ服と同じ髪型でいれば、周囲の人間は私達を判別出来ずに]困惑します。
その様子を見て、私達は楽しんでいました。
しかし、[昔と今の私達は違います]。
特に私の場合は視力を失っているので、彼を上手く騙せるのかも分かりません。
彼は仕事終わりの夕方に家へ来ると言っていたので、私達はそれまで綿密に打ち合わせをしました。
姉(妹)が家で彼を出迎え、妹(姉)が湖の近くを散歩しているから迎えに行ってほしいと彼に頼む。
[姉は私に成りきる]のですから・・・勿論、杖を持って行くのを忘れてはいけません。
彼を騙すにはそれだけで充分だと思ったんです。
それに、姉は・・・[きっと、彼への気持ちに決着をつけたかった]のだと思います。
だから・・・彼にわざわざ自分を迎えに来るようにしたのでしょうね。
『久々にこのイタズラをするわね。彼は昔みたいに引っ掛かってくれるかしら?』
そう言って、姉は家を出て行きました。
そして・・・[そのまま帰って来なかった]。
当初の予定通り、私は彼に妹(姉)を迎えに行ってほしいと頼みました。
なかなか戻って来ない2人を待っている間、[私はどうやら眠ってしまった]ようです。
家に戻って来た彼に起こされた私は[湖の近くを探してみたけれど周囲には誰もいなかった]と、彼から言われました。
でも、そんなハズはないんです。
姉は[家の近くの湖の前で夕陽を眺めながら彼を待っている]と・・・確かにそう言っていたのに!!
私は彼にそう伝えましたが、彼はやはり誰もいなかったと言うばかり。
とりあえず、1日様子を見ようと言う彼に私は頷く事しか出来ませんでした。
しかし、それでも姉は帰って来ない。
落ち込んでいる私に、彼は[いつもよりも豪華な]食事を振る舞ってくれました。
『元気がない時は[美味しい物でも食べて]元気にならなくっちゃ!!』
[珍しい食材が手に入ったから腕によりをかけて料理を作った]と言う彼は、私を元気付けようと精一杯励ましてくれました。
そんな彼に私は[とうとう真実を伝えた]のです。
あの時、湖で待っていたのは妹ではなく姉だった、と。
すると、彼はこう言いました。
『[分かっていた]よ。』
私は彼の言葉に[思わず、涙が止まらなかった]。
彼は私があまりにも落ち込んでいるので、追及せずにいたみたいなのです。
その後に私は彼から改めてプロポーズをされました。
そして、私は彼と一緒に暮らし始めたのです。
ですが、[いつまで経っても姉は戻らないまま]半年が過ぎた頃・・・私達は結婚しました。
最初のコメントを投稿しよう!